真犯人は胃の中の住む微生物
⽜が出すゲップが環境に良くない、ということを⽿にされた⽅もおられるでしょう。
⽜が⾷べる牧草は消化しにくいセルロースからできています。そのセルロースを分解しているのが⽜の胃の中に住んでいる微⽣物です。⽜には4つの胃があり、⼀つ⽬の胃(ルーメン)の中にいます。
この胃は200ℓという巨⼤なもの。⼈間の胃は1.5〜2.5ℓですから、いかに巨⼤であるか分かります。
微⽣物は、⼊ってきたセルロースを分解して⾷べますが、分解の過程で⼆酸化炭素やメタンなどが発⽣するのです。
これらのガスで⽜のおなかはいっぱいになると、ときどきゲップをしてメタンなどのガスを放出します。このメタンが環境に負荷をかけているというのです。
温室効果ガスのわずか0.6%
メタンの温室効果は、温暖化の原因として知られている⼆酸化炭素の25倍にもなります。発⽣したメタンは、対流圏の光化学反応で分解し、⼤気中では約12年かけて消滅します。これに対して⼆酸化炭素はほとんど分解しません。
⽇本の2020年度における温室効果ガスの総排出量は11億5千万トン(CO2換算)でした。農林⽔産分野で排出される温室効果ガスの量は約5,084万トン(4.4%)あり、そのうち約727 万トンが⽜のゲップで排出されたと考えられています。そこで冒頭の話が出てくるわけですが、これは⽇本の温室効果ガス総排出量の約0.6%に過ぎません。
さらに世界全体でみると、家畜が出すゲップにふくまれるメタンは、温室効果ガスの4%なのです。
牛が出すメタンを減らす取り組み
こうしたデータを⾒ると、なんだか⽜などが悪者のように⾔われてきましたが、⽜のゲップ以外の原因を解決しないと、温室効果ガスを減らすことはできません。
ただ、そうはいっても、いま、⽜から出るメタンを減らそうという取り組みが進んでいます。
たとえば、⽇本の農業・⾷品産業技術総合研究機構(農研機構)は、メタンの排出が少ない⽜を研究しています。ほかには、メタンを減らせるエサも、北海道⼤学などが発⾒し、新しい飼料が販売されています。また、遺伝的にメタンの排出が少ない⽜を品種改良していく、⽜1頭当たりの⽣産性を向上するなどの取組みも⾏われています。